阿部こどもクリニック
この建物は、1993年(平成5年)に竣工した石巻市の住宅併設の小児科診療所である。竣工後18年間に亘って、建築や設備のメンテナンスを私も協力しながら行ってきた。それが2011年3月11日の東日本大震災で被災したのである。
敷地は石巻駅からそれ程遠くない市街地にある。ただ北上川から100m程度しか離れていないので、北上川を上ってきた津波によって約60㎝冠水した。この建物は、地階・1階を診療所、2階・3階を住宅として使用していたので、地階にある診療所の玄関・待合室・事務室が完全に水没してしまった。
幸い診察室(1階)と住宅部分(2・3階)が無傷であったので、院長と診療所のスタッフがボランティアの人達に手伝ってもらいながら、冠水している水を排出し、多量のヘドロを排出し、少しずつ清掃していった。そして地元の業者が動ける様になってから、地階部分の仕上げを解体し、防水をやり直し、消毒+消臭を施した上で、仕上げをやり直した。設備は、給排水設備及び電気設備を全面的に改修することになった。更に再度津波に襲われた時に浸水しないように、一部地盤面を嵩上げして完全に壁で囲うと同時に、開閉式の防潮板を設置した。同一敷地内にある薬局の入口にも防潮板を設けて、敷地全体が孤塁となるようにした。
上記の工事は、仮診療しながらの工事であったが、本格的に診療を再開したのは6か月後の9月であった。